HE IS A PET.


「イルミネーション、見るの好き?」

 思い出したような口調で、怜が尋ね返す。

 イルミネーション?


「うん、好き」

 嫌いな女って、そういないと思う。


「じゃあ、けやき坂通り。咲希さんと歩きたい」


 ドキリとした。

 守田さんと、今日行ってきた場所だ。クルーズ乗船前に、ヒルズをぶらぶらしてきたのだ。


「……嫌?」
 
 怜が、不安げに小首を傾げる。

「ううん、行きたい」

 ああ、チクリと胸に感じる罪悪感。二股をかけているような気分。


 でも、守田さんとも怜とも付き合ってはいないから、浮気じゃない。

 やましくないなら、隠さなくてもいいはずだけど、わざわざ言うことでもないだろうし。

 黙って、本日二度目のデートスポットに出向いた。
 守田さんと行った時間帯にはまだ点灯していなかった雪の華が、豪華絢爛に満開しているだろう。



< 114 / 413 >

この作品をシェア

pagetop