HE IS A PET.


「咲希さん、見て。東京タワー、綺麗」


 青と白の光で彩られた幻想的なイルミネーション道を並んで歩く怜は、いつになくウキウキとはしゃいでいる。

 世俗的なものにはあまり興味が無さそうだと思っていたから、何だか意外だった。
「綺麗」と「凄い」を繰り返しては息を弾ませる怜は、まるで子供みたいだ。

 去年はこうだった、今年はツリーがこうだ、この先のあれがああだと、イルミネーションの案内人さながら、珍しくよく喋る。

 去年はアズミンと都内のイルミネーション巡りをしたらしい。

 昨日は戸田さんとクリスマスマーケットで買い物したらしい。


 それらの話題を自然に口にできる怜と違って、ここに来るのが本日二度目だと、言えなかった私。
 子供っぽく笑う怜の方が、実は大人なのかも知れない。

 それとも本当に他愛がないのか。


「癒されるから好き」だというヒルズのオアシス、小さな日本庭園に設置されたイルミネーションの滝を見上げる、怜の横顔を眺めた。

 一夜経てばまた違う顔を見せるんだろう、月に似ていると思った。


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