HE IS A PET.
Destiny




 外回りから戻ると、長尾さんが気だるそうにチョコを食べていた。


「どした腹減ったか? 物欲しそうに見んなよ」


「じゃなくて。まずお礼言ってもらえません?」


 共同出資の義理チョコといえど、ありがとうの一言くらいあっても良いでしょう。先輩として。

「はい、どーも。ありがとうね」

「むぅ、何なんですか。その言い方」

「お前こそ何なんだよ、その突っかかり方。むぅとか言っても、全然可愛くねーっつの」

「むぅ。別に、長尾さんに可愛く思ってもらいたくないですぅー」

「むぅ。ほんっとお前、可愛げねーなあ」

「あっ、むぅ使った!」


 長尾さんとの小競り合いは、毎度取りとめがない。

 こんな時、いつも取りなしてくれる田中さんは外出中で、ビシッと諌めてくれる広瀬さんは出張中。

 じとりとした視線で、私を冷静にさせてくれる亜美ちゃんは定時で退社。



「お疲れ様です」

 同僚の野上くん、ただいま帰社。ナイスタイミング。


「お疲れ様です」

「お疲れさん」


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