HE IS A PET.
「……あんたは? アイツの何?」
問い返されて答えに詰まると、鋭い瞳に警戒の色が強まる。
「飼ってんの?」
やっぱり間違いない。この男が怜を捨てた前の飼い主、『チトセ』だ。
改めてマジマジと見れば、雰囲気よりも若い。
チトセは唇の端で笑った。
「犬は、飼われなきゃ生きてけねーのかねえ」
小馬鹿にしたような言い方に、むっとした。
「誰のせいで、そうなったと思ってんの?」
「あぁ? 誰のせいだって言いてーんだよ?」
威圧的に凄まれて、睨み返す。
膠着状態の空気に割って入ってきたのは、チトセの連れ合いだ。
「おーいチトセ、何揉めてんだよ。早く戻んねーと、今日中にカネ用意出来なくなんじゃねえ?」
チトセは短く息を吐くと、ジーンズのチェーンに繋いだ財布から、名刺らしき物を取り出した。
「あんた、無駄に正義感強そうだな。覚悟があるなら、電話してきなよ。話してやる」
「覚悟って、何の……」
「ホントのこと、知る覚悟。知ったら、アイツのこと飼ってらんなくなるよ? それでも構わねーなら」
そう言って、チトセは私に名刺を手渡した。