HE IS A PET.




「四月の異動願いは叶わなかったけど」

 守田さんが、穏やかに微笑んだ。

「秋に異動、決まりそうなんだ」

「え? 異動って」

「東京支店。うち、神戸が本社だから、板橋にあるのは支店なんだけどね。倉橋さんに、付き合って下さいって言えなかったのは、遠距離っていう弱みもあったから。秋になってこっちに来たら、前向きに考えてもらえないかな?結……」


「見ぃーつけたぁ♪」

 勢い良く飛び込んできた声に、顔を上げて仰天した。

 シュウが立っていた。

 呆然とする私たちに、にぱぁと天使の笑顔を向ける。


「てへっ、来ちゃった♪」

 ペロッと舌を出されて、殺意が芽生える。

「全然可愛くない。てか、何で来ちゃったのかなー? カフェで友達とお茶してるって言ったじゃん」


「うん、だから来れたんだけど? 場所聞いてなきゃ来れないじゃん」

 あとで説教だな。


「ごめんなさい、守田さん。見ての通り、この子ちょっと痛い子なんです。でも結婚してて、子供もいますからね」

 だから私とは色恋の仲じゃないと、なんだか言い訳がましい自分の言動。




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