HE IS A PET.

 おやすみの……?
 なに?


 続く単語を脳内でフル検索するも、『キス』しか思い浮かばないのは、私の想像力が貧相だからか?


 おやすみの、キス。

 おやすみの、ハグ。

 おやすみの、握手。

 おやすみの……

 何かを求めて伸ばされた両手の間に片手を差し入れ、薄茶色の髪の毛を撫でた。

 まどろんだ瞳にかかる前髪を指先ですくいとり、手櫛でとかすように撫で付ける。


「おやすみ、怜。また明日ね」

 怜はしばらくぼんやりと私を眺めていたけれど、眠気に負けるようにして瞳を閉じた。

 程なくしてスヤスヤと寝息を立て始めた無垢な寝顔に、溜め息を吐く。

 甘えるように「おやすみの」を求めて来た怜に、アズミンは毎晩応えているんだろうなと思うと、妙にモヤモヤした。

 怜の扱いは意外と難しくて、私にアズミンの代理が務まるだろうか、不安だ。

 華奢な手首に嵌まっている大きな腕時計を、そっと外してやった。



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