HE IS A PET.


 怜がいない。商品の掲載ページはともかく、サイトのトップはずっと怜が飾っていたのに。

 化粧品メーカーのポスターモデルに起用されたことと、関連があるんだろうか。

 怜はちゃんとアズミンの元にいるんだろうかと、焦りにも似た不安がよぎる。


「サキちゃん?」

 明るい瞳が私を見上げて、小首を傾げた。

「する? わんにゃんコスプレ」

「しない」

 アズミンちから抜け出して、都内の賃貸マンション情報を検索した。

「ほら。ここに、条件入れて絞り込みできるから。路線、家賃、間取りね」


「えっとぉー、品川でぇー2LDKのー…角部屋でぇ」

 ひょいひょいと高条件を指定していくシュウは、やっぱりふざけてる。


「シュウ。まさか、またアズミンちに転がり込むつもりじゃないよね?」

『品川で2LDKマンションの角部屋』と言えば、アズミンちに他ならない。


「今さら、そんな都合のいい真似。しちゃ駄目だって、いくらシュウでも分かるよね?」


 いくらアズミンでも怒るよ。
 いや分かんないな、アズミンのことだから、出戻りシュウを喜んで受け入れたりして。

 そんなことになったら……また怜の居場所が危うくなってしまう。


< 167 / 413 >

この作品をシェア

pagetop