HE IS A PET.

「分かってるってー。タツキ、新しいヤツ飼ってんだもんね。結婚するってね」

「えっ?」

 アズミンが、結婚? 怜と?


「……それ誰から聞いたの?」

「タツキ。去年の冬かな、ばったり会って。ライオンみたいな外人連れてて。ニューヨーカーだから、結婚できんだってウキウキして言ってた」

 ああ、エリックか。
 ニューヨーク州では、同性婚が法律で認められている。

 それにしてもアズミンが、エリックと結婚まで視野に入れて付き合っていたなんて。知って、複雑な思いが胸に広がる。


「タツキも結婚することだし、サキちゃんもどう? 俺と結婚しちゃう?」

 くるりと顔を振り向けてにぱぁと笑うシュウに、深い溜め息が洩れた。

「アズミン、結婚しないよ。私もしない」

「えー何でぇー?」

 この押し問答、この三日で何度繰り返したか分かんない。

「アズミンは、その彼と別れたから。私は……好きな人がいるから」


「……それって、この前サキちゃんとお茶してた」

「ううん、違う」

 守田さんには、「そんな相手がいるなら言ってほしかった」と言われた。

 怜のことじゃなくて、シュウのことだ。
 同居することになったと話したら、引かれた。わざわざ言うことじゃなかったのかもしれないけれど、黙っているのも後ろめたかった。

 きっともう連絡は来ない。


< 168 / 413 >

この作品をシェア

pagetop