HE IS A PET.
アズミンのライフスタイルは、ぶっ飛んでいる。
それを見ている周りの人間にとっては、驚異であり、新鮮であり、憧れでありながら、共感できないものである。
私も例に漏れない。
アズミンの自由奔放で天真爛漫なスタイルが羨ましいとも思えるけど、とても真似は出来ない。
綱渡りしているような危なっかしさと、ジェットコースターに乗っているような忙しなさに、寿命がすり減りそうな思いがする。
一般女性の平均的な感覚を捨て去れない者としては。
「あ、ちゃんと躾してあるから大丈夫よ。一緒のベッドで寝ても、『一晩中、待て』出来るくらいお利口さんなんだから」
得意顔でペット自慢をするアズミンの感覚は、やっぱりちょっとズレていると思う。
いや、かなりか。
「無理ったら、無理だってば」
「えー、こんなにお願いしても駄目ぇ? こんなこと頼めるの、咲希しかいないのに」
「嘘だ。アズミン、他にも友達たくさんいるじゃん」
言って、ちょっと自己嫌悪。友達少ない私が言うと卑屈な響き。
アズミンは煙草を揉み消し、私を見た。
「安心して怜を預けられるのは、咲希だけよ」
まるで愛の告白のように熱っぽくを見つめる瞳に、気圧される。余りある色気のベクトルを、こっちにまで向けないでもらいたい。
なかなか落ちない私に、アズミンは次の手段に出た。
「シャネルの財布でどう? クルーズラインのピンク」