HE IS A PET.


 今日の怜は打たれ強い。向けられる憎悪に怯むことなく、食い下がった。

「チトセの、お兄さんですよね。俺は、チトセの幼なじみで、クラスメイトだった芦沢……」

「知ってるっつの、馬鹿じゃねえの。悠里の幼なじみってことは、俺とも幼なじみだろ。つか、俺も千歳だっつの。呼び捨てやめろ」


「……すみません。悠里に、お兄さんがいたこと、記憶になくて」

 本当に見覚えがないらしく、びくびくしながらもマジマジとチトセを見つめる。
 チトセが大きく息を吐いた。


「お前、ガキん頃から悠里しか視界に入ってなかったもんな。何度も会ってっけど? 苛めてもやったのに、覚えてねえのかよ。まあ、俺は十三で家を出たから、以来会ってねえけど。小四までの記憶くらい、残しとけよな。馬鹿」


「――あ」

 怜が、弾かれたような声を出した。

「あっくん?……背、すごく伸びてる。野球は? 寮入るって聞いて、手紙書いたんだけど」

「お前は、相変わらずチビだよな。野球だ寮だって、いつの話してんだよ。お前から手紙貰ったことなんかねえし。適当言ってんじゃねえぞ」

「手紙、書いたけど。悠里に破られて出せなかった。あっくんのこと聞くと、悠里がすごく怒るから。聞けなかったけど、ずっと気になってた。元気かなって。元気そうで嬉しい」

 昔を思い出したらしい怜が、嬉しそうに『あっくん』に笑いかけた。
 当のあっくんに再会を祝福するムードは微塵も無いのに。

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