HE IS A PET.
「あっくん、やめて。咲希さんは関係ない。全部俺が、悪いから」
「何で怜が、全部悪くなるの? 怜を一方的に捨てたのは悠里でしょ」
そうした悠里の事情は聞いたけれど。知らされていない怜にしてみれば、ある日突然奪われたのだ。
悠里で満たされていた、小さな世界を。
その世界の崩壊と共に、怜は壊れた。
「悪いのはコイツだ! お前のせいだ、お前がしっかりしてねえから、弱い男だから、捨てられたんだろ! お前がもっと強かったら、悠里は……っ」
ふつりと途切れた罵声に、思わず目をみはった。
泣いているのかと一瞬錯覚した。
顔を歪め、チトセは笑っていた。仄暗い笑みを浮かべて、怜に言った。
「……悠里の居場所、教えてやろうか?」
ただし、と付け加える。
「俺の犬になれよ。お前、魔女と契約したんだってな? 身体やる代わりに、悠里の情報もらうって。契約は三日間だろ。魔女は当分ここには帰らせねーから。俺がその契約、引き継いでやるよ」
私の耳、おかしくなったのかな。
悠里のこと黙っとけよって、男が男飼って楽しいかよって言ったはずのチトセが、まさかこんな提案をするはずがない。
これはきっと嫌がらせだ。怜を傷つけるための。