HE IS A PET.


「怜、もう帰ろう」

 逃げるように促した。
 けれどチトセは私より近い距離から片手を伸ばし、怜の頬に触れた。

「お前、聡子ともう寝た? お前、ほんと最低。年増の、元カノの叔母さん相手にも勃つのかよ。なあ、元カノの兄貴に罵られて……、興奮してんのか」

 怜の頬から離れた手が脚の間に滑り込み、その中心を掴んだ。

 身をすくませた怜の顔が小さく歪む。
 それを見たチトセが嘲笑い、怜の耳元に唇を寄せて何かを囁いた。

「……っ、違う」

 私の恋心をどこまでも裏切る怜から、目が逸らせない。


「……薬が、効いてて」

「薬? ああ、興奮剤か」

 チトセの声は冷ややかだ。

「無理やり飲まされたか?」

 首を横に振る怜に、苛立たしげに舌打ちする。


「なら、被害者ぶんなよ。てめえの身体のことくらい、てめえで責任持て」

 怜を追い詰める口調に興奮はない。
 あるのは侮蔑と冷ややかな憎悪。

 突き刺さるようなそれを一身に受けている怜の瞳から、ついに涙が零れた。

「何、泣いてんだよ。ふざけんな、泣けばいいと思ってんのか。選べ。尻尾巻いて逃げんのか、俺と契約すんのか。どっちだよ」

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