HE IS A PET.
「いいわけないでしょ。暴力振るうなんて最低」
怜の頬に手を当てた。赤く熱を持った皮膚に、チトセの手加減の無さを知る。
「本人の了承、取っただろ。何してもいいってよ。それとも何だよ、エロいこと期待したか? あいにく俺は変態じゃねーんだよ」
底意地の悪い笑みを張り倒したい衝動をぐっと押し殺し、怜の腕を取った。
「十分変態だよ。ドSのシスコン。行くよ、怜。悠里の居場所なら、私が調べる」
「いい度胸だな。俺に下手売って、どうやって調べるつもりだよ」
「どうやってでも。探偵雇うとか、方法はあるでしょ」
「あっても潰すけどな、全力で。つか、別に本気で捜さなくていーぜ。捜したけど、見つかんなかったことにしとけよ。コイツのこと、手離したくないんだろ?」
チトセはどこまでも意地悪だ。
「なあ、怜」
チトセが初めてまともに呼んだ怜の名前は、耳を疑うほど優しい響きだった。
「あんまり迷惑かけんなよ。選べよ、この女か俺か」
怜の腕を掴む手に、ぎゅっと想いをこめた。
この手を離すときは、怜の幸せを確信したときにしたい。
「咲希さん、ごめん……あっくんと、二人で話したいから」
怜はそう言って、私の手を外した。