HE IS A PET.


「分かんないです。笑っててくれたら、嬉しいなって思うだけで」

「僕も」

「え?」

「倉橋さんには笑っててほしいな。彼と話してる時の倉橋さん、すごく楽しそうだったから。彼が笑わせてくれるなら、それでいいと思ったけど。今日みたいな顔をさせるようなら、任せとけない」

 穏やかに、だけど力強い口調で守田さんが言った。

「僕が、幸せにしたい。結婚を前提に付き合ってほしい」

 びっくりした。

 結婚を前提に幸せにしたいだなんて、まるでプロポーズだ。

『サキちゃん、俺と結婚して下さい』

 またよぎる、シュウの顔。

 あの爆弾を食らってから、少し腑抜けになった私は然るべき反応も出来ず、守田さんを見つめた。

 優しくて穏やかで。それでいてちゃんとエスコートしてくれる守田さん。
 紳士的で常識的で、社会的立場もちゃんとしていて、結婚相手として、何ら申し分がない。

 だから逆に申し訳ない感じ。

「倉橋さんがね、好きなんだ」

「どこがいいんですか、私なんかの」

「『私なんか』なんて言わないでよ。僕の好きな人のこと」


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