HE IS A PET.
「爺さんからね、聞いてたんだ。倉橋さんの話」
「え、平林のおじーちゃんから?」
「うん。担当が変わって、からかいがいのある新人になったって聞いて。どんな人かなって興味を持ったのが最初かな。実際会ったら、爺さんの話通りの人で、ますます惹かれた」
「話通りって……」
どんな話をされていたんだろう。なんか恐い。
「さばけてて、負けん気が強くて、情に厚いから、損するタイプだって」
「……それって、誉めてます? けなしてます?」
「誉めてるよ。そういうところに惚れたから。覚えてる? 爺さんが亡くなった日。倉橋さん、爺さんが食べたがったタルトのために、全力疾走してくれたよね。得意客の叔父叔母の機嫌取りを、放棄して。買って来たところで、何も食べられる状態じゃなかったのにね」
ああ。あれはトラウマだ。
結局、私はおじーちゃんの最期の望みを叶えられなかった。
「あれ、すごく嬉しかったよ。ありがとう」
優しい響きに泣きそうになる。
守田さんは、好きな人をちゃんと大切にする人だ。
付き合ったら、宣言どおり幸せにしてくれるんだろう。
どうして、私はその幸せを欲さないんだろう。
「困ってる? 告白の返事は、ゆっくり考えてから頂戴。電話でもいいから」