HE IS A PET.


 喫茶店を出て、仕事に戻る守田さんと別れ、少し歩いた先でアズミンに電話した。


「もしもし、咲希? 怜は一緒?」

「ごめん、アズミン。怜、連れ帰れなかった」

「どーいうこと?」

「チトセと、魔女のマンションに残るって」

「チトセ兄と? どーいうこと?」

 アズミンの声色から明るさが消えて、少し厳しくなった。

 責任を持って必ず怜を連れ帰ると言ったのは、私だ。
 なのに、それを果たせず、連絡も遅くなった。

 あまりの無責任さに、自己嫌悪する。

 アズミンに事情を説明した。
 怜と魔女が交わした契約のこと、それをチトセが引き継いだこと。
 それは怜が自ら望んだのだということ。


 静かに話を聴き終えたアズミンは、取り立てて感想を述べることもなく言った。

「チトセの電話番号、教えて」

「え……」

「大丈夫よぉ、喧嘩売ろうってんじゃないから。ちょっと話がしたいだけ。怜をご両親から預かってる者として、監督責任があるもの」

 アズミンの主張はもっともだ。
 
 誕生日が来るまで怜はまだ十九歳だ。何かあれば、保護者に責任が問われる。

 その責任を取れるのは、私じゃない。
 私の出る幕は、所詮ここまでか。


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