HE IS A PET.


 何一つ残さず怜が出て行ったとき、急にガランとしてしまった世界に、一人取り残されたような気がして、すごく淋しかったのを覚えている。

 何もかも残して、シュウは出て行った。
 これはこれで結構淋しいもんだなと、シュウの痕跡を一つ一つ消しながら思った。

 ああ、そうか。怜も。
 怜には、もっと大きな穴が空いたに違いない。
 十二年間も毎日顔を合わせて、全てを共有してきた幼馴染を失って。

 共有したのは単なる時間じゃない。友情も恋情も劣情も、全てを悠里に捧げてきたというのなら。

 悠里の代わりになんて、誰にもなれない。


 怜は今頃どうしているだろう。
 悠里に会うために、チトセの……犬になって。

 殴られたりしてないだろうか。嫌なことを強要されていないだろうか。
 色んな想像をしてしまいそうで、怖くて、停止させていた想像力が、急速に働き出す。

 どうしよう。まさか、取り返しのつかないことになっていたら……


「っだいまぁー」

 びっくりして顔を上げると、びっくりした顔のシュウが立っていた。

「……サキちゃん?」

 確かめるように私の名前を呼び、

「シュウ……え?」

 確信したように飛びついてきた。


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