HE IS A PET.


「この状況で、意識すんなって方が無理でしょ大体……当たってんだって」

 シュウチンが。太股に。

「ああ、この固いの? スマホだけど」

 抜け抜けとそう言って、密着した下半身をすりすりと擦りつけてくるシュウチンに、殺意が芽生えた瞬間。
 ウケ狙いとしか思えない、ふざけた着ごえが流れてきた。

「あー、もう。ムードぶち壊しぃー。ごめんね、サキちゃん」

 自分の選曲に文句を垂れながら、身体を離した脩吾は、ジーンズのバックポケットから取り出した電話に出た。


「もっしぃー、セイナちゃん。あー、ごめん。今日やっぱ帰るのやめる。 サキちゃんと一緒に寝る約束したから……ん、ああ、ありがと……うん、……え?」

 セイナちゃん……ああ、脩吾の姉ちゃんか。
 何度か会ったことあるけど、才色兼備でちょっと変わり者。
 てか、脩吾さん。なに勝手なこと報告してくれてんの。帰らないとか、一緒に寝るとか。

 ギロリと睨みつけた脩吾の顔が、みるみる曇っていく。

「マジで…………ああ、うん。分かった、いや全然」

 沈んだトーンで会話を終えた脩吾は、強ばった表情のまま口元だけ柔らかく笑った。

「ごめん、サキちゃん。やっぱ帰る。じっちゃん、危篤だって」


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