HE IS A PET.


 脩吾のおじいちゃんと、悠里。会ったこともない二人だけれど、死なれるのは嫌だ。
 私の大事な人の、大事な人だから。

『咲希さんの、お世話になった人だから』

 平林のおじーちゃんに手を合わせたいと言った、怜を思い出す。

 私も悠里の冥福を祈る。
 そして、脩吾のおじいちゃんの回復を。

 だけど、何より祈りたいのは、怜のことだった。

 死にそうな脩吾のおじいちゃんより、死んでしまった悠里よりも。諦めたように生きている怜のことが、放っておけない。

 どうか無事でいて。


「あんた、車で帰るの止めなさい。そんなぼうっとした顔して。寝不足なんじゃないの?」


 母親の言うことを、たまには素直に聞いておけば良かった。

 大丈夫だからと運転して帰った車で、私は事故った。

 車同士の接触事故。

 現場は見通しの悪いT字路だった。
 私の方が直進コースだったから、相手方の過失の割合が大きいけれど、こっちも前方不注意だった。

 車は二台とも凹んだけれど、双方大きな怪我がなかったのが不幸中の幸いだ。

 だけど、東京に戻れなくなったのは痛かった。

 事故処理に労力と時間を費やし、家族には怒られた。
 念のためと連れて行かれた病院では、三時間待ち。

 検査で異常はなかったけれど、大事を取らされて翌日も実家で謹慎、会社は休んだ。


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