HE IS A PET.
「ちょっとあんた、感動してないで何とか言いなさいよ。まったく、こんなイケメンな彼氏がいるなんて。この子、こう見えて恥ずかしがり屋でねえ」
オホホホと、取り繕ったように母親が笑う。
「違うって、チトセは……」
世間一般的に見てイケメンなのは認めるけれど、断じて彼氏ではない。
「すみません、お母さん。僕も言葉が足りないタイプの人間なんで、咲希さんとは行き違いがありまして。ご挨拶が遅れて、申し訳ありません。千歳敦司と申します」
開いた口が塞がらなかった。
唖然とする私をよそに、二人の会話は続いている。
「年下なので、頼りなく思われるかもしれないですが」
「あら、年下なの。いいわねえー、咲希には勿体ないじゃないの。頼りにしてるわよー」
チトセは母親の言葉に薄く笑って、私の片腕を取った。
「じゃあ、すみませんが。今日はこれで。行こう。荷物これだけ?」
私のバッグ持ちまでしてくれる、紳士っぷりは徹底しているのに、腕に食い込む指先が痛い。
「あら、まだお茶も出してないのに。良かったら、お夕飯うちで食べてかない?」
「いえ、今日は急だったんで。また今度、ゆっくり」
向けられる笑みは穏やかなのに、目は全く笑っていない。私のことが嫌いだと、瞳は正直に語っている。
謝りに来たなんて、絶対嘘だ。
何をしに来たの?
聞きたいことが沢山ある。
どうやらチトセも同じだったらしい。実家を出て車に乗り込むなり、本題を切り出した。
「アイツ、どこにいるか知ってるか」