HE IS A PET.
Morning
「咲希」
事務所に入って来るなり、アズミンは真っ直ぐ私を見て両手を広げた。
あっと思ったときにはもう、ジャスミンヴェールの香りに包まれていた。
「怖かったでしょー、もう大丈夫よぉ」
抱き締められて、頭を撫でられる。
「ごめん、アズミン」
愚かな子供になったような、情けない気持ちでその手に甘えた。
いつも完璧メイクのアズミンだけど、いつになく疲れきった顔をしてる。
多分寝てないんだろう。怜を捜してて。
「なあ、感動の抱擁は挨拶のあとにしてくんねえかな、社長さん。大事な商談相手だろ」
チトセの挑発的な言葉を受け、アズミンは私から離れて、すっと前に歩み出た。
「あらぁ、失礼。いつもなら真っ先にいい男に目が行くんだけどぉ。顔が良くても性格が悪いから、視界に入んなかったのかしらあ」
うわお、チョー喧嘩腰。こんなんで商談まとまりますか?
「言ってろ、カマ野郎」
アズミンはんふふと笑った。