HE IS A PET.


 前々から私が欲しがっていたシャネルの財布を買って帰ると約束をして、アズミンはヨーロッパ周遊に旅立った。

 飼っているペットは私に、仕事は相棒の真崎さんに任せて。


 アズミンはネットショップの社長をしている。

 売っているのは、若い女性向けのルームウェアだ。
『可愛い』を重視したデザインと『肌触りの良さ』にこだわった素材、それでいて低価格というのが受けて、商品はヒット御礼。

 会社は右肩上がりに成長している。


 アズミンがデザインから製造まで携わったバスローブとフリースのパジャマは、私も愛用してる。
 どちらもふかふかで、マシュマロみたいなピンク色でかなり乙女チックだ。

 ただ、どんなに可愛いルームウェアを着ても披露する相手がいないってのが虚しいとこだけど。

 彼氏イナイ歴、気付けばもうすぐ四年が来る。


 だから正直、アズミンのペットの写真を見た時には、気が抜けた。

「何だ、身構えて損した。女の子じゃん」


「可愛いでしょ、怜」

 アズミンの会社のサイトトップを飾っていた。

 薄茶色の髪の毛に同色の瞳。ふわりと柔らかい微笑はどことなくアンニュイで、恥ずかしそうに見える。
 小花柄のパジャマから覗く白い手足が、妙に艶かしい。

 何故だか、今にも居なくなりそうな雰囲気の女の子。

 それが、私が怜の写真を初めて見たときの第一印象だった。


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