HE IS A PET.

 だけど怜は、決してそんな犠牲は望んでいない。

 自分のためにアズミンがそれだけのものを失ったと知ったら、苦しまないはずがない。

 そう言うと、アズミンは言った。

「怜が苦しむくらい、どうってことないわ。守れるんなら」

「でも、怜はお墓荒しなんて、遺骨盗んだりなんてしてないのに。何で示談に応じるの?」

「怜がやったかやってないかなんて、もう関係ないのよ。チトセはどうやってでも、怜を犯人に仕立てるつもりなんだから。それに、脅されるだけのネタがあるあたしの、責任よ」

 脅されるネタなら、私にもある。それは私の責任だ。
 だけど、

「やっぱり、そんなの、納得いかない。私、チトセともっかい話してみる」

「チトセは仕事熱心なやり手よ。あの若さで出世してんのは、それだけ高額な会費を組織に上納してきたってことよ。どこの世界も拝金主義よねえ」

 アズミンだって、お金大好きなくせに。仕事熱心なやり手のくせに。

『アズミは、俺の誇りだから』

 怜の誇りなのに。





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