HE IS A PET.

「……怜、もぉ、ストッ……プ」

 ペロペロ攻撃を交わし距離を取ると、怜は目を開けて、淋しさが増したような顔をする。

 そんな顔するなって。

 私は怜の後頭部に手を回し、少し乱暴に口づけをした。


「……んぅ、っふ」


 息苦しさに顔を歪め、怜は私を見た。

 呼吸を整える内に、意識が覚醒したみたいだ。



「………咲希、さん」

 確かめるように、私の名を呼ぶ。


「おはよ、怜」

「お……おはよ」

 急によそよそしく照れた素振りを見せるから、呆れてしまう。
 相手も分からずに、キスしてたんだと分かって。

 寝惚けていれば、誰とでも不可抗力になれそうだ。
 そんな分別のなさも、ペットだと思えばこそ許せる。


 可愛い、預りもののペット。


「迎えに来たよ。遅くなってごめんね。お腹は空いてない? 帰りにどっか寄ろっか」

 怜は逃げるように視線を逸らした。

「俺……咲希さんに、嫌われたと思っ……」


「嫌いじゃないよ。好き。可愛くて、いい子で、大好き」


 気分はすっかりミチジローさんだ。

 昔観たテレビで、ミチジローさんが言っていた。

「愛してるよ」と伝えながら、気持ちのいいところを撫でてやると、どんな動物も安心するんだって。

 人だって動物だから、それはきっと同じだ。



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