HE IS A PET.
で、本当に寝ちゃうとか。
私って、どんだけ危機感ないの。
枕元で鳴っているスマホに手を伸ばし、ぼうっとした頭で通話に出ると、
「あっ、倉橋さん……安住が連れ去られて……、つい今しがたなんですがっ」
取り乱した口調の真崎さんが、まくし立てる。
「え……連れ去られたって、誰に?」
「ヤクザ風の男です。事務所に押しかけて来て。安住は呼び出されたみたいで、やって来てすぐに、連れて行かれました。食事をしてくるだけだから、心配はいらないと言われましたが……とてもそんな雰囲気には……。安住の好きな男って、あの男なんですか?」
「どんな男でした?」
長身で黒髪短髪、クールな顔立ちで粗野な口調なら、チトセに間違いない。
だけど、真崎さんが述べた男の特徴は全然違っていた。
背はそう高くなく、がちっとした体型で、五分刈りの頭に剃り落とした眉毛、ギョロっとした丸い目……と言えば……
『ヤスさん』
魔女のマンションで鉢合わせした、チトセの先輩に間違いなさそうだ。
「もしもし、倉橋さん?」
「真崎さん、後で電話します。心当たりに確認次第、知らせますから」
真崎さんとの通話を切り、チトセに電話する。
数コールのち、不機嫌そうな声が出た。
「はい」
「ねえ、AZMIXは巻き込まない約束なんじゃないの?」