HE IS A PET.


「関わんなっつったよな。あの画像、ばらまかれたいのか?」

 低く押し殺したように問われて、答えに詰まる。

「賢明だな」

 言葉とは裏腹に小馬鹿にしたような言い方と、さっきより温度を感じる声色に、慌ててすがりついた。

「待って! 切らないで。画像、ばらまいてもいいから、私も関わらせて。安住のとこに、連れてって」

 何の犠牲も払わない奴が偉そうにと、チトセは嫌う。
 なら、それなりの犠牲を払えば、

「私も当事者になっていいでしょ?」

「……あんた、相当痛いな」

 チトセは呆れたように呟いた。

「いいぜ、気に入った。そこまで言うなら、容赦はしねえ。とことんいたぶってやるよ。召かしこんで待ってろ、迎えに行く」

「え、召かしこんで……?」

「ああ、一番いい服に着替えろよ。上手い飯食わせてやる。初デートだ」

 何でそうなるの?

 意味が分からないまま通話は切られ、意味は分からないけれど、とりあえずクローゼットを開いた。

 一番いい服?

 値段で言うなら、シャネルの黒ドレスだ。
 仕事の付き合いで、それなりのパーティーに出席するとき用の、超よそ行き。

 よって、却下。

 最近着てないジルのワンピはセクシーすぎるし、フェラガモのスーツは、昔の流行り型だし。



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