HE IS A PET.
「安住さんは食欲がないみたいでね。料理余りそうだから、食べてよ」
チトセが息を吐いて着席したのを見て、私も腰を下ろした。
十五人は座れそうな円卓を囲むのは、新とアズミンとチトセと私の、四人だ。
壁ぎわに立っている新の部下も四人。彼らの仕事ぶりも気になるし、静かなアズミンも気にかかる。
黙って、私をじっと見てる。
「倉橋さんは、飲める口?」
新が酒瓶を手に取ると、後ろにいた部下から杯を手渡された。
カラメル色の液体が注がれる。
口付けると、きつい芳香が鼻につき、甘苦い独特な味が口内に広がった。
興酒をストレートでなんて、私には通すぎる。ビール下さい、ビール。
「千歳には烏龍茶。二人分の料理、取り分けて」
新の指示で、食事再開の準備が整う。
高級中華料理店のVIPルームなのに、店側の給仕人が一人もいないってのも違和感がある。
密談のための、人払いってやつか。
「お前はどうも誤解してるようだね、僕のことを。安住さんからふんだくる予定の示談金を、僕が横取りしようとしてるとでも?」
「違うとでも言いてえのか」
「ああ、違うね。金で示談しようなんて、お前のがめつさに黙ってられなくなってね」