HE IS A PET.
「……いらないわ」
「え?」
「は、何言ってんだよ」
「いらないって言ってんの。好きにしたら?」
帰るわよ、と言って席を立ち、私の腕を引くアズミンに抵抗する。
帰るって、いらないって、
「何それ、何で。帰るって何。やだよ、帰んない。怜、返してよ。早く、警察、誰か」
「咲希、落ち着いて。ちゃんと見て。あの子の手、思い出して」
怜の手は……
女の子みたいに滑らかな甲に、節の目立たないすらりとした指が並んでいる。
指の長さの割りには、爪の形が子供っぽくて、それがまた可愛いとよく思った。
握ると、そこから愛しさが駆け巡る。離れると、次に触れる勇気がいる。
私を翻弄する、愛しくて憎らしい、特別な手だ。
正視に耐え難くて、まともに見ていなかった氷づけの小指を見つめた。
「……怜じゃない…、誰……?」
「エリック・カーンズ。安住さんの飼い犬では? あなたがあげたお小遣いでは足らなかったようだね。日本人じゃないから何も分からなかったと、言い逃れしようとしたもんでね。勝手に墓を掘り起こして遺骨を盗んではいけないと、教えてあげましたよ。彼、日本語はペラペラでしたよ」
新の言葉に目をみはった。