HE IS A PET.


「エリックが……どうして、悠里のお墓を……?」

 エリックとチトセ兄妹に接点が?

「知り合いの芦沢怜を尾行していて、たまたまうちの墓地に辿り着いたらしいね。ギャンブルの借金を抱えていて、よほど金に切羽詰っていたらしい。身代金目的で芦沢怜を誘拐するつもりだったらしいが、生身の人間を誘拐するよりも、遺骨を盗んだほうがリスクが低いと思ったそうだ。行成の墓は豪華だからね、大金持ちの墓だと思ったらしい。低脳にも程があるな。まあ父の墓ではなく、チトセの妹の墓を選んだのは、不幸中の幸いだがね」

「あぁ!? 何だと」

 チトセが怒る。

「エリック・カーンズにとって、という意味だ。まだ生かされているだけ、幸いだろう?」

「……はっ、よく言うよ」

「で、安住さん。本題に戻りましょう。この指の本体は要らないんですね?」


「要らないわ。帰るわよ、咲希」


 私はすっかり放心状態だ。アズミンに支えられながら、がくがくする足で退席する。
 腰が抜けたようだ。


「大丈夫? 咲希。怖かったわねえ、もう大丈夫よう」


 チトセがすぐ後からやって来て、車に乗せてくれた。


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