HE IS A PET.


「あ~、これにて一件落着って感じねえ」


 後部座席のシートに背中を預け、後頭部まで預けたアズミンが言った。

「ねえ、そこの。無実の人間に罪を被せて、嵌めようとしてたオニーサン」

 助手席から振り返りもしないチトセを、

「被せてハメるのは、アレだけにしてよねえ」

 下ネタで振り向かせるオネーサン、強し。


「嵌めようとしたわけじゃねえよ」

 憮然と答え、チトセは吐き捨てるように言った。

「新の言葉は、会の総意だ。あんたには今後一切、関与しねえから安心しろ。お互いに目を瞑って背を向ければ、利害が一致する」

「咲希にも、今後一切、関わらないで」

「ああ」

 あれよあれよという間に、目の前で取り交わされていく約束の数々に、頭も心も追いつかない。
 私だけが取り残されているみたいだ。

 怜の無実が証明されて、怜の指が無事だと知って、魂が抜けそうなほどほっとしたけれど。
 その代わりに知ることになった事実も、出来れば知りたくなかったとも思う。


 あの小指がエリックのものだと知り、顔色一つ変えただけで、態度を一貫させたアズミンは凄い。

 何でそんなに普通に下ネタ交じりに、チトセと今後の話を詰めているんだろう。


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