HE IS A PET.


「梶に届けてくんねえか? 腐っちまうといけねえ」

 差し出されたのは、高級中華店の紙袋だ。

「あ、そっか」

 新が誉めてた「あれは可愛いな」って、梶のことだったのか。てっきりペットかと思った。


「梶にって……」

 すっかり忘れていたけど、もうじき二時が来る。
 私のスキャンダラスな写真を、目にした上司が驚愕している頃でしょうか。


「幸誠ビルの二階が、梶の寝床になってる。まだ寝てるか、そろそろ起きる頃だ」

「まだ寝てるって……梶、私の会社に行ったんじゃないの?」

「行かせてねえよ。写真とデータはどこにも流出させてねえし、全部消去する。あんたには金輪際、関わらねえ。梶に会ったら、言ってやってくんねえか。もう会うことはねえって」


『また遊びに来てや』

『うん、分かった』

 梶と交わした、安易な口約束を思い出す。

「あいつは、怜じゃねえんだ。怜みてえに弱くねえし不器用でもねえから、変な同情はいらねえ。言ってる意味、分かんだろ」


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