HE IS A PET.


「……分かった。梶にそれ渡して、サヨナラ言ってくるよ」

 チトセの言うとおり、私が梶に出来ることは、きっとそれくらいしかない。

 下手な同情や上手な嘘は、きっと梶を傷つける。
 もうすでに、傷つけてしまったかもしれない。

 出来ない約束は、もうしない。


「ねえ、私も一つだけ、チトセにお願いがあるんだけど」

「やだ、やめときなさいよ。チトセのエッチって、面白味なさそうよぉ」

 だから、オネーサンは黙ってて下さい。てか、エッチに面白味って何?


「何だ?」

 チトセが訊いた。アズミンをスルーして、私に。

「え、面白味っていうか、醍醐味っていうなら……」

「違えよ。頼みって何だって訊いてんだ」

 あ、そっち? 危うく恥を忍ぶところだった。危ない危ない。


「怜を許してあげて。もう許してるから帰ってきてもいいって、言ってあげて」

「そうよぉ、愛してるって言ってやって」

「もうアズミンは黙ってて。真面目な話してんだから」

「あら、あたしだって真面目に話してるわよ。チトセ、怜のこと好きよねえ?」


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