HE IS A PET.


「じゃあチトセ、魔女に電話して、もう許すから帰って来いって言ってあげなさいよ」


数秒の沈黙が流れる。

 チトセに魔女の話は禁句なのに、そうとは知らないアズミンが地雷を踏んだからだ。

「は? んなこと、あんたに頼まれる筋合いねえな」

 ほら、イラつきMAX。

「だって、チトセが怒ってると帰って来れないじゃない」

「それが何だよ。あんたには関係ねえだろうが」

「関係あるわよー。魔女が帰って来れないと、怜も帰って来れないもの」

「は?」

「どーいう意味?」

 チトセと同時に聞き返す。

「あの子の性質上、ご主人様を置いて、自分だけ戻って来るなんて出来ないものぉ」

「ちょっと待てよ、ご主人様って何だよ」

 あ、やだな。

 また嫌な予感がする。嫌な想像をしてしまう。繋がる記憶、繋がる……怜と、女。


「怒っちゃ駄目よぉ。あれよ、ペットを連れて旅する動物番組。あんな感じだと思えば、微笑ましいでしょ」

「聡子が、怜を連れて旅してるってか?」

「そうよ。だけど、所詮お嬢さまの気紛れだしねえ。もう飽きてる頃じゃないかしら。家出人が家出ペットを拾っても、飼い続けるなんて出来ないでしょうし」




< 327 / 413 >

この作品をシェア

pagetop