HE IS A PET.
「じゃあチトセ、魔女に電話して、もう許すから帰って来いって言ってあげなさいよ」
数秒の沈黙が流れる。
チトセに魔女の話は禁句なのに、そうとは知らないアズミンが地雷を踏んだからだ。
「は? んなこと、あんたに頼まれる筋合いねえな」
ほら、イラつきMAX。
「だって、チトセが怒ってると帰って来れないじゃない」
「それが何だよ。あんたには関係ねえだろうが」
「関係あるわよー。魔女が帰って来れないと、怜も帰って来れないもの」
「は?」
「どーいう意味?」
チトセと同時に聞き返す。
「あの子の性質上、ご主人様を置いて、自分だけ戻って来るなんて出来ないものぉ」
「ちょっと待てよ、ご主人様って何だよ」
あ、やだな。
また嫌な予感がする。嫌な想像をしてしまう。繋がる記憶、繋がる……怜と、女。
「怒っちゃ駄目よぉ。あれよ、ペットを連れて旅する動物番組。あんな感じだと思えば、微笑ましいでしょ」
「聡子が、怜を連れて旅してるってか?」
「そうよ。だけど、所詮お嬢さまの気紛れだしねえ。もう飽きてる頃じゃないかしら。家出人が家出ペットを拾っても、飼い続けるなんて出来ないでしょうし」