HE IS A PET.
 

 雑居ビルの二階に、梶の寝床はある。

 部屋ではなく、「寝床」とチトセが言った理由が分かった。

 八畳ほどのワンルームには、万年床だと思われる布団が二組並んで敷かれている。
 他には小さな折り畳みテーブルが一つ置いてあるだけで、テレビさえない。

 まさに寝るためだけの部屋で、梶は半裸で寝ていた。

 よほど眠いのか、鍵を開けてくれたあと即行で二度寝に入った模様。

 参ったなあ。

 このままそっとチトセのお土産を置いて帰ろうかとも思うけど、梶にちゃんとサヨナラを言いに来たわけだし。

 起こすのも、可哀想な気がするし。
 かといって起きるまで待つのも、外で待ってくれているアズミンに悪い。

 どうしよう。しかも目のやり場に困る。

 どうしてパンツ一丁で寝てるんだろう。

 それにしても派手だな、このパンツ。
 ローライズの黒いボクサーパンツ、お尻のところに金ラメ文字で『LOVE』とある。

 パンツのセンスもさることながら、抱いている抱き枕にもつい目が行ってしまう。
 バナナに顔がついている。リアルなおっさんの。

 おっさんのバナナに抱きついている梶の寝顔に目をやると、

「突っ立っとらんと、座ってーよ」

 目を閉じたまま、梶が言った。


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