HE IS A PET.


 座れと言われても、座るスペースは布団の上しかない。

 やむを得ずそこに正座すると、梶はバナナを抱いたまま、ごろんとこっちに寝返りを打った。

 お尻のロゴが丸見えになる。

『LOVE』の隣には『SEX』

 なんて直情的なんだろう。

 デザインに目を奪われていると、それはまたごろんと一回転した。

 てか、ローライズがヤバイ。
際どすぎるラインから慌てて目を逸らし、何だかんだいって、じっくり鑑賞してる自分が一番ヤバイと気づく。


「ねえ、梶。目え覚めてんなら、起きて」


 ぱっと見開いた瞳が、私を見上げて固まった。

「……え……何で、ほんまに、咲希ちゃん?」

「うん、おはよー。寝ぼけてる?」

 笑いかけると、バナナを手離してばっと飛び起きた。
 寝癖で跳ねまくった金髪と、首から吊り下げている金色の太陽。

 ブランドロゴが刻まれたサークルの中に、揺らめく太陽モチーフは、ブルガリの革ひもペンダントだ。
 子供には不相応な高価品だろうけれど、梶にはよく似合っている。

「ああ、これなあ。チトセがくれてん、十七の誕生日に。めちゃかっこええやろ」

 私の視線を拾って、梶が笑う。

「てか、ちょっと待ってや。服着るわ。めっちゃ恥ずいやん。まさか咲希ちゃんやとは思わへんかったし」





< 331 / 413 >

この作品をシェア

pagetop