HE IS A PET.
「何でやねん」
「あかんの?」
真顔で一歩踏み込んできた梶に、後ずさりつつ睨み付けた。
「あかんよ」
「何で?」
「何でって、そういうのは、誰とでも気軽にしちゃ駄目だと……思う」
言いながら、尻すぼみになる。
昔『ウリ』をしていた梶は、今はデリヘルの電話番だ。
私の言葉は、間違いなく、梶を全否定してる。
「……ごめん」
「何で謝んの? そんなん言うて、チトセとヤったから?」
「チトセと? してないよ」
「ほんまに? やましいこと、一つもあらへんの?」
知っとんやで、とでも言いたげな口ぶりにはっと思い当たる。
もしかして、あの写真。
「見たの?」
「何? やっぱりあるんやん、やましいこと。正直に言うてや」
大人びた顔で笑う梶を、どうやったら傷つけないで済むんだろう。
嘘つきな優しい大人になるか、正直な酷い大人になるか。
選び切れない駄目な大人に、梶が溜め息を吐いた。
「ほんま、かなんなあ」