HE IS A PET.


「何でやねん」

「あかんの?」

 真顔で一歩踏み込んできた梶に、後ずさりつつ睨み付けた。

「あかんよ」

「何で?」

「何でって、そういうのは、誰とでも気軽にしちゃ駄目だと……思う」

 言いながら、尻すぼみになる。

 昔『ウリ』をしていた梶は、今はデリヘルの電話番だ。
 私の言葉は、間違いなく、梶を全否定してる。

「……ごめん」

「何で謝んの? そんなん言うて、チトセとヤったから?」

「チトセと? してないよ」

「ほんまに? やましいこと、一つもあらへんの?」

 知っとんやで、とでも言いたげな口ぶりにはっと思い当たる。

 もしかして、あの写真。

「見たの?」

「何? やっぱりあるんやん、やましいこと。正直に言うてや」

 大人びた顔で笑う梶を、どうやったら傷つけないで済むんだろう。

 嘘つきな優しい大人になるか、正直な酷い大人になるか。

 選び切れない駄目な大人に、梶が溜め息を吐いた。


「ほんま、かなんなあ」


< 333 / 413 >

この作品をシェア

pagetop