HE IS A PET.


 羽田十九時半発の飛行機でブーンと飛んで、香川県の高松空港に降り立ったのが、二十時五十分。

 タクシーでブーンと走って、魔女に指定されたホテルへと向かう。

 山奥にある空港から離れるにつれて、少しずつ明るくなる夜景を車窓から眺め、ようやく疲労感を噛み締めた。


 あー、超疲れた。
 ここまで来るのに、楽勝どころか、泥試合だ。くたくたです。

「お仕事ですか?」

 タクシーの運転手のおじさんに、ふいに尋ねられる。

「え?」

「ご出張ですかぁ? お若いのに、大変ですねえ」

 同情されるほど、私がくたびれている上に、きちりとしたビジネススーツを着ているからだろう。

 仕事をズル休みして、家出ペットを迎えに来たとは言えず、曖昧に苦笑した。


「じゃあ、ぜひ本場の讃岐うどん食べて帰って下さいね」

 おじさんの郷土自慢を聞きながら、タクシーで移動すること約三十分。

 香川県といえば讃岐うどん、というイメージしかなかったけれど、風景が綺麗で、映画のロケ地としても有名だと教えてくれた。
 タクシーで市街を流して見る感じでは、まあよくある地方都市という感じだ。


 魔女と怜が泊まっているホテルは、分かりやすく一等地に建っている、他より高い建物だった。

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