HE IS A PET.


 ホテルの待ち合いロビーで、コーヒーを飲んでいる魔女を発見した。

 白い透かし編みニットに、花柄のふわりとしたマキシスカート。爽やかなショートヘア。
 妖精みたいな可愛らしさで、私に微笑んだ。

「今晩は。はるばるお迎え、ご苦労さま」

「あ、いえ。すみません、色々と……」

 会ったら、文句の一つでも言ってやろうと思っていたはずなのに、実際顔を合わせると、そんな気も起きない。

 ただ胸がつきりと痛んで、可愛らしい手から目を逸らした。


「……怜は、どこですか?」

 見当たらない怜の代わりに、魔女の足元に置かれたボストンバッグが目に入る。

「部屋よ。逃げないようにしてあるから、連れ帰るなり逃がすなり、後のことはお任せするわね」

 魔女はにこりと微笑むと、カードキーと小さな鍵をテーブルの上に置いた。
 そしてすくっと立ち上がり、ボストンバッグを手に取った。

「じゃあ、そういうことで。さようなら」

 って、え?

 引き留める隙も理由もなく、颯爽と立ち去る後ろ姿を呆然と見送った。

 魔女の帰宅手段が心配にはなるけれど、魔女だからすごい呪術でも使うのかもしれない。



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