HE IS A PET.


 テーブルに置かれたカードキーと小さな鍵を、手に取った。

 カードキーに印字されてあるから、部屋番号は分かる。

 小さな鍵は、南京錠の鍵に似ている。
 よく分からないけど、手錠の鍵かもしれない。逃げられないようにしてあるからと魔女は言った。

 これがその鍵なら、早く外してあげなきゃ。


 今すぐ行くから、待っててね。怜。


 着いた部屋のドアの前で、そっと息を吐いた。

 怜がどんなに淫らな姿を晒していようが、例え室内に情事の色香が残っていようが、想定の範囲内だ。

 ショックを受ける覚悟を決めて、エイヤッと扉を開けた。

 中に入ると、明かりが点いていた。


 ゆったりとした広めのツインルーム。手前側のベッドに、怜がいた。

 布団に入って、読書中だ。
 手にした雑誌から顔を上げて、私を見て、固まった。

 私も面食らう。
 てっきり縛られているもんだとばかり思っていた。自由の身とは、想定外だ。


「迎えに来たよ。帰ろう」

 そう言うと、怜は困ったように瞳を伏せた。

「……聡子さんが、いないと」


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