HE IS A PET.


 口にされた名前に、思わずむっとする。
 再会して、開口一番が「聡子さん」って。

「魔女ならもう帰ったよ。怜のこと置いて、先に帰ったよ。チトセのとこに。だから怜も帰ろう。アズミンのとこに。アズミン、怜の帰り待ってるよ」

 驚いたように再度私を見て、怜は泣きそうな顔をした。

 魔女に捨てられたことが辛いのか、アズミンが待っていると聞いて嬉しいのか。
 とにかく泣きそうな顔をして言った。

「……仕事は?」

「仕事? AZMIXで、また働いていいんだよ」

「あ、違う……咲希さんの仕事。今日、仕事は」

 いま私の話なんてどうでもいいのに。

「有給。溜まってて、消化しなくちゃいけなかったから。うどん県、一度来てみたいなあってずっと思ってたし。うどん、大好きだから」

 本当のことは言えない。

 悠里の遺骨がエリックに盗まれて、大騒動があったことを怜は知らないだろうし、知らない方がいい。
 知れば、きっと自責する。

 怜は悪くない。


「敦司も、怜とアズミンのこと、もうとやかく言わないって約束してくれたよ。悠里のことは……、怜が知ったところで、どうしようもなかったんだから、しょうがないよ」

 自分でも冷たい言葉だなと思う。

「どうしようもなくても、側に居たかった」

 ぽつりと呟く怜の、こんな顔が見たかったわけじゃない。

 どうしようもないのは、私も一緒だ。


< 341 / 413 >

この作品をシェア

pagetop