HE IS A PET.
口にされた名前に、思わずむっとする。
再会して、開口一番が「聡子さん」って。
「魔女ならもう帰ったよ。怜のこと置いて、先に帰ったよ。チトセのとこに。だから怜も帰ろう。アズミンのとこに。アズミン、怜の帰り待ってるよ」
驚いたように再度私を見て、怜は泣きそうな顔をした。
魔女に捨てられたことが辛いのか、アズミンが待っていると聞いて嬉しいのか。
とにかく泣きそうな顔をして言った。
「……仕事は?」
「仕事? AZMIXで、また働いていいんだよ」
「あ、違う……咲希さんの仕事。今日、仕事は」
いま私の話なんてどうでもいいのに。
「有給。溜まってて、消化しなくちゃいけなかったから。うどん県、一度来てみたいなあってずっと思ってたし。うどん、大好きだから」
本当のことは言えない。
悠里の遺骨がエリックに盗まれて、大騒動があったことを怜は知らないだろうし、知らない方がいい。
知れば、きっと自責する。
怜は悪くない。
「敦司も、怜とアズミンのこと、もうとやかく言わないって約束してくれたよ。悠里のことは……、怜が知ったところで、どうしようもなかったんだから、しょうがないよ」
自分でも冷たい言葉だなと思う。
「どうしようもなくても、側に居たかった」
ぽつりと呟く怜の、こんな顔が見たかったわけじゃない。
どうしようもないのは、私も一緒だ。