HE IS A PET.


「……怜」

 伸ばした片手を、そっと怜の頬に当てた。
 びくりと反応して私を見上げた薄茶色の瞳が、困惑に揺れる。

 ふわりと柔らかい癖っ毛も繊細なまつ毛も、キメ細やかな肌も、くっきりと艶かしい鎖骨の窪みも、全部……

「……大好き」

 憎らしいほどに好きで、どうしようもない。

 慰めたいとか、労りたいとか、そういう優しい気持ちじゃなくて、いっそ壊してしまいたいと願うほどに。

 触れている方と反対側の頬に、そっと唇を寄せた。

「だから、明日一緒に帰ろう。いつまでも、ここにはいられないよ」


「咲希さん………とりあえず……服、着たい」

 怜が言いにくそうに、自己申告する。

「今、裸だから」

「うん、見れば分かるけど」

 その理由は聞きたくない。
 魔女を抱いた後か、これから抱く予定だったかなんて聞きたくないのに、

「聡子さんが、」

 怜はどうしても話したいらしい。

「クローゼットに、鍵かけて行ったから」

「え?」

「お風呂、入ってて。出たら、着るもの全部無くなってて……」

 洋服も下着もホテルの寝間着も、バスタオルさえ無かったらしい。





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