HE IS A PET.

 もしもお金に困ったら、売ってお金に替えてほしい。
 そう言うと受け取ってくれなさそうだから、

「私だと思って、連れて行って」

 似合わない可愛いことを言ってみる。

 呆気に取られていた怜の顔つきが険しくなる。

 また拒絶される、と思った私の手を、怜はすくい上げるようにして取った。

 そしてもう片方の手で、ピアスを一つ、丁寧に摘まみ上げた。


「じゃあ、一個だけ。御守りにさせて。もう一つは咲希さんが持ってて。そしたら、 すごく頑張れる気がするから。無くさないように、着けてもいい?」

 天然で可愛いことを言って、怜は左耳の穴の一つに、手にしたピアスを着けた。

 遠慮なく両方持ってけばいいのに。半分じゃ価値は半分以下だ。


 けど私にとって、残された片ピアスは、何よりも大事な物になってしまった。



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