HE IS A PET.
「無理じゃないでしょ? 一番札所は徳島県なんだから、徳島行きのJRかバス探して。便数はそう多くないはずだから。駅で捕まえるか、一番札所で待ち伏せる方かよね。どちみち怜が徒歩なら、札所での先回りは可能でしょ」

 さすがアズミン、頭の回転が速い。

 教えてもらって初めて、一番札所が徳島県にあることを知った。
 てっきり、ここ香川県からスタートを切るんだと思ってた。

「じゃあ、アズミンがそうしてよ。私は怜が八十八箇所巡り終えるのを、待つ。待つって怜と約束したから」

「咲希、それ本気で言ってんの?」

「本音言うと、アズミンにも邪魔してほしくない。怜がどうしてもって、やり遂げたがってることだもん。応援してあげてほしい」

 子供みたいなを言ってる自覚はあるけれど、本気でそう思う。

「ちゃんと帰ってくるから、待っててあげて。怜の帰る場所、ちゃんと空けといて。新しいペット、飼わないで」

 聞こえよがしな溜め息が吐かれる。

「言いたいこと、言ってくれるじゃないの。あたしも言っていいかしら? 咲希に任せるんじゃなかったわ。怜のことは、自分で何とかするわ。咲希は、シュウのこと何とかなさいよ」


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