HE IS A PET.


 脩吾?
 唐突に名前を出されて、浮かんだ脩吾の顔は

『バイバイと、おやすみのキス。また電話して』

 珍しく元気がなかった。別れ際、気にはなったんだ。


「玉手箱、ちゃんと持ってる?」

 アズミンが尋ねた。

「あの箱? うん、バッグの中に入れっぱなしだけど」

 チトセの車でうちまで送ってもらったとき、別れ際アズミンに小箱を渡された。
 簡素なボール紙で出来た、軽い箱だ。

「家に帰るまで、開けてはなりませんよ」と念押しされて、開けるの怖いなと思ってた代物だ。
 そういや、怜のことで頭いっぱいで、

「ごめん、開けるの忘れてた」

 玉手箱というと、やっぱりあれかな。白い煙がもくもく出て来る?


「それね、シュウから」

「え、脩吾から? 私に?」

「あたしに。でも咲希にあげる。元々、咲希にあげるつもりだったみたいだから。シュウって、ほんとに馬鹿よねえ。説教してやって」

「何? 意味分かんない」

 脩吾が馬鹿なのは知ってるけど。

「見れば、分かるわよ。あ、でも家に帰ってから開けてね」

 そういうと乙姫は一方的に電話を切った。


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