HE IS A PET.



 守田さんが待ち合わせに指定したカフェは、有名百貨店のすぐ近くで、大きな看板が上がっていて、すぐに分かった。

 レンガ造りのレトロな建物の階段を下りて、地下の扉を開く。
 異国情緒漂う内装に、ゆったりと流れるジャズの旋律。ふわりとした珈琲の薫りに出迎えられた。


「倉橋さん」

 入り口から近いテーブル席で、守田さんが手を振っている。


「すみません、お仕事中に」

 早目に来たつもりが、お待たせしてしまった。

「超、恐縮です」

 ぷっと守田さんが吹き出す。

「何でそんなに堅苦しいの? こちらこそ、超恐縮です。まさか、こっちで会えるなんて思わなかったから、嬉しいよ。何頼む? お薦めはね、挽きたて珈琲と手作りチーズケーキ」

 向けられたメニューに視線を落とす。

「じゃあ、それで」

 丁度テーブルに来た店員さんに、守田さんが注文してくれる。
 さりげない気遣いの数々に対し、話が切り出しにくくなる私に、

「申し訳ないけど、六時には会社に戻らないといけなくてさ。話って、告白の返事かな?」

 守田さんが切り出してくれた。

 どんだけヘタレてんの、私。しっかりしてちょ!


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