HE IS A PET.


「はい。よく考えて、あの……」

 じっと見つめられて、緊張がみなぎる。

「ごめんなさい。私、好きな人がいます」

 言った! 
 守田さんは目を丸くして、それから苦笑した。

「やっぱり、あの美形の彼? 同級生だったっていう」

「じゃないんですけど……」

 しどろもどろになる。
 何を言っても、弁解になる。

「良かった」

 守田さんが笑う。優しく穏やかに、少し淋しげに。

「はっきり振られて、諦めがつくよ。倉橋さんに会えて、良かった。これからも、もしかしたら仕事や叔父のことで関わることがあるかもしれないけど、普通に顧客の一人として接してくれたら、嬉しいな」

 こんないい人を選べなかった私は、馬鹿だ。
 でも無理して賢くはなれない。

「はい、そうさせて下さい。私も、守田さんに会えて良かったです」

 誠意をこめて伝える。

「好きになってくれて、ありがとうございました」

 守田さんはまた目を丸くして、それから苦笑した。


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