HE IS A PET.
「そんな顔しないで、笑って。怜の笑顔、覚えときたい」
私の言葉を受けて、健気に口角が上げられる。でも笑顔とは程遠い。
「もう会えないみたいな言い方」
「会えるよ、怜が会いたいと思ったら」
その仮定に、私は期待しない。
怜が淋しいのは、アズミンがいないから。明日で解消される淋しさだ。
「アズミンが帰って来たら、三人でご飯食べに行こう」
「うん」
私の気持ちなんてお構いなしの怜は、はにかんで頷いた。
「咲希さん、電話?」
怜に言われて、バッグの中でスマホが鳴っていることに気づいた。
「もしもし?」
半個室という周囲への気兼ねなさから、電話に出ることにする。
何せ、相手は存在自体がR指定の要注意人物だ。公然の場では会話もはばかれる。
「Hello、さきぃ。元気ぃ?」
「何?」
「あれ、何か今日冷たくなぁい?」
「そう? 気のせいじゃない」
「じゃない。声が冷たいもん。何で怒ってんの」
「さあ。胸に手を当ててみなよ。何か思い当たるかもね」
「んー分かんない。あたし、胸感じないんだもん。ね、怜は? 今、そこいる?」
怜は、落ち着かない様子でこっちを見ている。
「いるなら、代わって」