HE IS A PET.
Model



「ねえ、怜は好きでやってるの?」


 不躾な質問をぶつけると、怜はきょとんとした顔を向けた。

 う、可愛い。と女の私がたじろぐほど、女装した怜は可憐だ。

 くるりとカールさせたまつ毛は普段の倍増しで、地毛より茶色いウィッグが、肩先でくるんと揺れる。
 薄い一重瞼、色素の薄い瞳、白い肌、桜色の唇。ネグリジェ風のハート柄のパジャマと、その上から羽織ったふんわり真っ白いポンチョがよく似合っている。

 そんじょそこらの女子よりずっと清楚で、ずっと女の子らしい。
 守ってあげたくなるタイプというやつか。


「女の子の格好して写真撮られるの、嫌じゃないの? 嫌なら嫌だって、ちゃんとアズミンに言わなきゃ駄目だよ。ノーギャラなんでしょ」

 アズミンの会社『AZMIX』の専属『女の子』モデルとして、怜は月に一度、女装姿を撮影される。

 それが本人の趣味なら、別にいい。
 誰にしも変身願望というものはあって、蓋を外してそれを解放する日があってもいい。

 だけど怜は、好き好んでやっているようには見えない。アズミンの命令で、嫌々させられているのかもしれない。


「ノーギャラっていうか……俺、アズミに生活全部、面倒見てもらってるから。俺が、アズミに返せることって……これくらいだし」

 怜は薄く苦笑して、私を見た。

「だから、好きでやってる」

「そっか、それならいいけど」

 微笑み返したとき、部屋のドアがノックされた。


「怜ちゃん、準備できた?」



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