HE IS A PET.
呼びに来たのは、カメラマンの戸田さんだ。
怜の撮影は、『平日の貸しスタジオで、アズミンの立ち会いの下、戸田さんに撮ってもらう』というのが、お決まりのパターンらしいけれど。
アズミンの勝手で帰国が延び、立ち会いが出来なくなった今回は、私が代理で付き添い人を務めている。
業務的な打ち合わせは真崎さんが既に済ませていて、私はただ見守るだけでいいと言われたものの。
ほんとに、特にすることがない。
「いいよー、怜ちゃん。こっち、視線ちょうだい」
パシャッ。
「うん、可愛い。手、顔に添えてみて。そう」
パシャッ。
「もっと自然に笑って。うんキュート」
パシャッ。
絶え間なく掛けられる言葉と、たかれるストロボの光。
専門はグラビアアイドルの撮影だという戸田さんは、巧みな言葉で、怜を盛り立てていく。
「う~ん、どうも今日は固いね。表情」
優しさの中にもプロ意識を感じさせる口調で、戸田さんが怜に言った。
「安住社長がいないと、気分乗らない?」