HE IS A PET.


「お疲れ様でーす。平林先生から、お電話ありました。電話欲しいそうです」


 事務所に戻ってデスクに着くなり、亜美ちゃんがメモを持ってやって来た。


「ああ、ありがとう。その件なら、携帯にもかかって来たから」


「そうですかぁ。じゃあ、もういいですね」


 亜美ちゃんが去ると、隣の田中さんが眉をひそめた。


「昨日も呼び出されてたじゃない。相続関係でゴタゴタしてるんなら、中村先生紹介したら?」

「ええ、そうなんですけど。相談料が高いからヤだって」


 法律関係のゴタゴタした相談を受けた場合、弁護士を紹介するのだけれど、相談料は三十分五千円。
 高いから払いたくないという平林先生は、しがない会計士の私に何でも相談してくる。


「病院のお昼休みに、ちょっと行ってきます」


「何でも引き受けすぎんなよ」

 私たちの会話を耳にしていた長尾さんに、チクリと忠告される。


「じゃあ、長尾さんから頼まれてた沼本の調査、断ってもいいですか?」


「お前なぁ。それはやれ」


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